交通事故がきっかけで…
神立さん(仮名)は、32歳で、妻と2人の幼い子供と共に、家賃6万円のアパートで暮らしています。神立さんは、派遣社員として自動車部品を製造する工場で働き3年になります。神立さんは、独身だった6年程前に交通事故が原因で初めてカードのキャッシングを利用し20万円ほど借入れをしました。今では複数のカード会社から、総額480万円の借金を抱えてしまっています。
神立さんの奥さんは、子供が小さいこともありますが、体調が優れず、働ける状態ではないそうです。神立さんは、毎月10万円近い金額を返済しなければなりませんが、手取り約20万円の給料だけでは当然足りず、2年程前から派遣の仕事を終えた後、夜7時から夜中の1時頃までファミリーレストランの皿洗いのアルバイトをして月8万円程度の収入を得ています。それでも、返済をしてもすぐに借りてしまうという「自転車操業」に陥っています。
神立さんは、高校時代は野球部のキャプテンを務めていて、体力には自信があったようですが、事務所に相談に来られたときには、500円玉よりも大きい円形脱毛症にかかっていました。
「何とか再生したい…」
神立さんには、自己破産による「免責不許可事由」もなく、破産も問題なく認められると考えたので、当初は自己破産の申立てを勧めました。しかし、神立さんから、「何とか破産しないで解決する方法はないか」と尋ねられました。そこで、自己破産について詳細な説明をしたうえで、個人再生の説明も詳細にしたところ、「ぜひ個人再生でお願いします」ということになり、個人再生の申立てをしたのです。
神立さんには、自動車ローンの残金が100万円近く残っており、そのクレジット会社から「車を引き上げさせてもらう」という連絡が司法書士にありましたが、事前に、司法書士から説明を受けており、車の引き上げについては承知していたので、慌てることはありませんでした。神立さんは、知人から古い中古車を10万円で購入し、通勤に利用しています。
個人再生の申立てから、手続きが終了するまで半年程度時間がかかりましたが、神立さんは、毎月、2万8千円程度を3年で返済するという再生計画案が裁判所に認められ、計画的に返済を続け、円形脱毛症もだいぶ小さくなり、ほとんど目立たなくなりました。
司法書士のコメント
一般的に、自己破産手続きに比べて個人再生手続きのほうが費用が高額になり、手続きにかかる時間や負担も大きくなりますので、特に不利益がなければ、破産を避けるべきではないと考えますが、破産にマイナスイメージを持たれている方が多いことも事実です。
このような場合は、自己破産についても十分に理解していただいたうえで、個人再生手続きの詳細を説明し、選択肢の一つとしてもらうことにしています。