いつの間にか借金が高額に?
石岡さん(仮名)は、25歳の独身女性で両親と同居しています。石岡さんは、正社員として事務の仕事に従事し、毎月手取約17万円、ボーナスは約30万円を年2回支給されています。
石岡さんは、初めて事務所に相談に来たときには比較的派手な服装でアクセサリーなども身に着けていて、一見、借金で苦しんでいるようには見えませんでした。
石岡さんは、以前に事務所で借金の整理をしたことのある女性に連れられて、「気がついたら毎月の返済が20万円程度に膨らんでしまってとても返せそうにない」「破産するしかないと思う」と話していました。
ほとんどの借金は「浪費」が原因
石岡さんは、装飾品や洋服に興味があったようで、例えば、10万円以上する下着を、クレジットで何点か購入していました(補正下着というそうです)。それ以外にも、高価な洋服などを数点購入していました。しかも、最近購入したものもありました。金銭の借入は、もっぱら、それらの返済に充てるためのものです。
石岡さんは、破産しても、免責(借金の免除)を受けられない可能性がありました。石岡さんの借金の原因のほとんどは浪費あり、その場合は免責不許可とされる可能性が高いのです。それらの事情を石岡さんに説明し、また、個人再生という手続きがあることを話すと、「ぜひその手続きでお願いしたい」と個人再生の手続きを進めることになったのです。石岡さんは、見た目とは裏腹に、素直な性格の方でした。
申立て前にやるべきこと→商品の返却
その後、事務所が主導して、返却できる物品は全てクレジット会社に返却し、半年後、石岡さんは、個人再生(小規模個人再生)の申立てをしました。本来であれば、債務総額500万円の5分の1である100万円を返済(3年で毎月2万8千円程度)とする内容の再生計画案を提出するところですが、石岡さんは、あえて180万円を返済(毎月5万円程度)する内容の再生計画を立案しました。石岡さんには、「債権者に申し訳ない」という思いもあったのですが、それとともに、毎月5万円の返済が十分可能であったことと、確実に再生計画の認可(債権者の同意)を得たかったからです。
この再生計画案に対して、債権者の反対(不同意)を受けることもなく、計画どおりに手続きが成立しました。
司法書士のコメント
このようなケースに対しては、「浪費をして借金の免除を受けるとはけしからん!」というご意見があると思います。確かに、そのとおりだと思います。しかし、社会が、このような方々を非難するだけで「自己責任」として放置した場合、その方の今後をシミュレートしたとき、社会全体としては決して健全な状態とは言えないと思います。
もちろん、最初から借金を踏み倒すつもりで借入れをした場合は、別問題として民事的・刑事的な責任を追及される恐れがありますが、石岡さんは、浪費のきっかけは強い精神的ショックを受ける出来事があったことによるもので(ここで詳細には触れませんが)、債権者を騙す意思があったわけではありませんでした。
このようなケースで大切なのは、自分の過去行動を十分に反省することです。そして、現実から逃げるのではなく、自分がしたことに対して、どのような行動をとれるかを考えることだと思います。我々は、今回、そのお手伝いをさせていただいたものです。