「名義貸し」はダメ!

赤塚さん(仮名)は、現在35歳になる女性で、高校を卒業後、ビジネスホテルのフロント係の仕事に就きましたが、その直後から、同居していた母親に頼まれてクレジットカードを作り、キャッシング機能を利用して現金を引き出し、母親に手渡していました。母親は、何かと理由を付けて「お金が足りない」と、赤塚さんに助けを求めたのです。

赤塚さんは、その後、「返済に必要」と母親に言われ、カードごと手渡し、さらに、消費者金融のA社やP社のカードも作り、「私が必ず返すから」と言う母親の言葉を信じて、カードを渡してしまいました。

しばらくは、母親がカードを利用し、借入れと返済を繰り返していたようですが、間もなく支払いが滞るようになり、申立人のもとにカード会社等からの督促状が来るようになりました。母親は、赤塚さんになりすまし、カード会社からの電話に対応していたものの、返済が困難になり電話に出なくなったため、督促状が届いたようです。

赤塚さんが母親に、これらの借金について問いただすと、赤塚さん名義のもの以外に、母親自身も複数の消費者金融の借金を抱えており、弁護士の先生に依頼して借金の整理をしていることを告白されました。赤塚さん名義の借金は、3社で150万円程度あり、これについては、赤塚さんが友人から紹介された司法書士に債務整理を依頼し、整理後の毎月、2万数千円程度の返済は、母親がすることを約束させました。

結婚が…

赤塚さんは、3年ほど前に、飲食店の従業員として働いていた男性と結婚しました。しかし、その男性が問題のある人物で、些細な事で突然怒り出し、暴力を振るわれました。赤塚さんは、身の危険すら感じるようになり、何度か警察にも相談するなどし、最終的に離婚が成立しました。アパートは赤塚さんが契約していたので、男性に出て行ってもらいました。

赤塚さんは、結婚する際、その男性から仕事を辞めるように強要されたため結婚直前に退職しており、離婚時には無収入の状態でした。そのため、すぐに仕事を見つける必要があると思い、母親がしていた生命保険の外交の仕事をすることにしました。しかし、すぐに安定した収入を得られるわけではなく、6万円の家賃の支払いや生活費が足りなくなり、消費者金融のR社から20万円を借りました。以前に債務整理をしているので、申込みを断られるのではないかと思いましたが、債務整理から7,8年が経過しているためか、借りることができました。

体調に異変

生保の仕事は、ガソリン代等の経費やお客さんへの手土産などを自腹で負担しなければならず、保険の契約もそう簡単に取れるものではないので、生活費が足りなくなり、消費者金融のA社やP社、さらにI社からも、借金を重ねてしまいました。赤塚さんは、生保の仕事を頑張れば、何とか借金を返していける、と考えていました。ところが、半年ほど前から頭痛や全身の痛み、特に間接の激しい痛みに襲われ、仕事ができる状況ではなくなってしまいました。複数の医療機関で検査をしたものの原因が判らず、紹介状を書いてもらい、大学病院で検査を受けた結果、間接リウマチに加え、〇〇症候群という難病の可能性が高いことが判明し、今後、本格的に治療を行うことになりました。

赤塚さんは退職を余儀なくされ、家賃が払えなくなり、知人の男性を頼り、同居させてもらっています。その男性は前夫とは違い、真面目な人格者で、近い将来結婚をしたいと考えています。

破産へ…

合計200万円の借金は返済不可能であり、自己破産するしかありません。司法書士の調査の結果、母親に名義貸しをした3社のうち2社の支払いが中断しており、合計30万円が未払いのまま残っていることが判明しました。これも併せて、破産の申立てを行うことになりました。

赤塚さんは、同居の男性に内緒で破産を進めようと司法書士に相談しましたが、司法書士から、「後で発覚して信頼関係を無くすより、最初に全部話すべき、その男性ならきっと理解してくれるはず」とのアドバイスを受け、全て男性に話したところ、理解してくれて、今後も協力してくれると約束してくれたそうです。

赤塚さんは、最終的に無事に免責を受け、借金の支払い義務を免除されました。

司法書士のコメント

名義貸しは、破産法上、免責不許可になる可能性があるだけでなく、名義を貸したほうに刑事上の責任を問われる恐れがあります。したがって、名義貸しは絶対にしてはいけません。因みに、名義貸しをした借金の返済がされておらず悩んでいる方は、安易に自己判断せずに、借金問題に詳しい専門家に相談することをお勧めします。