平凡な生活が…

友部さん(仮名)は、定時制高校を卒業後、リネン類の配送、回収等の仕事に正社員として従事する25歳の独身男性です。友部さんの手取り月収は約13万円程度ですが、両親と同居しており、贅沢はできませんが生活していくうえで経済的に問題になるようなことはありませんでした。友部さんは、平凡な生活の中、「彼女が欲しい」と強く思うようになり、しかし、女性と知り合う機会が全くありませんでした。

マッチングアプリの罠

友部さんは、23歳の時、スマホのいわゆるマッチングアプリの広告をクリックしたことにより、女性と知り合うことができました。その女性については、写真で顔を確認し、電話でも何度か話しをしました。写真ではなかなかの美人で、電話での対応はとても優しそうな感じだったそうです。間もなくして、その女性から、「勤務先で会社の金を紛失するなどして大変なトラブルになってしまい、至急、金銭を用立てる必要がある」、などと言葉巧みに言われ、友部さんは、「助けてあげないといけない」という強い思いから完全に信用してしまい、消費者金融から50万円を借りて、女性に言われるままに振込みをしてしまいました。

想いは儚くも…

その後、その女性とは連絡がとれなくなってしまい、貸したお金の返済は諦めるしかありませんでした。友部さんは、その女性とは直接会ったことがなく、後日、司法書士から、「それは騙されたのであり、写真も関係のない人物のものであった可能性が高い」と聞き、ショックを受けました。


渡る世間は詐欺だらけ

友部さんは、消費者金融から借りた金を何とかしないと考えていましたが、ある日、スマホに届いた副業の案内を信用してしまいました。「わずかな資金で3億円が手に入る」という内容のメールでした。副業とは、その会社の説明によると、「企業に代わって文章のデータのコピーを他者に送る簡単な作業を繰り返すことにより、収益が得られる」という、よく分からない内容であり、しかし友部さんは完全に信用してしまい、手持ちのクレジットカードで30万円を借り入れ、そのまま指定された口座に振り込んでしまいました。

純粋無垢な性格がアダに…

友部さんは、最終的に7社から計200万円の借金を抱えた状態で、勤務先の社長とその友人である父親と一緒に司法書士のところに相談に来ました。皆で相談した結果、「破産をして、再出発しよう」、ということになりました。友部さんの借り入れには色々と問題がありましたが、下のような反省文を裁判所に提出した結果、免責が出され、借金の免除を受けることができました。

雑感

今回のようなケースでは、「欲をかいて騙されて自業自得なのに破産するとはけしからん」というご意見があるかもしれません。確かに、そのとおりかもしれません。しかし、友部さんのような人が世の中に一定割合存在することも事実です。まともな消費者教育も受けずに今の社会に放り出されることは、ワクチンも受けずに何ら免疫のないまま未知のウィルスだらけの社会で生存しようとするようなものだと思います。また、成人年齢を18歳に引き下げたことにより、彼らも、ウィルスらの攻撃対象とされ、その被害に対して「自己責任」と片付けることは、社会として無責任のような気がします。

我々は、せめてこのような方々の受け皿の一つになれればと考えています。

反省文

「1、私は、女性と知り合うことや、お金を増やすことのために、安易に、スマホのネット上の勧誘を信用してしまい、高額の借入をしてしまいました。今後は、そのようなことを絶対にしてはいけないと考えています。そのためには、安易にネットなどの勧誘を信用しないこと、特に、借入れをしないといけない誘いは、「だまされている」という自覚を持ち、絶対に相手にしないことを心がけるようにします。


2、家計については、無駄な出費をしないことを心がけています。特に、今後は、何か問題が起きても借入れができないので、不測のことがおき、高額の出費が必要となったときのために、積立てなど、預金をするようにしようと思います。

3、今後、万が一、私が借金をして返済ができなくなっても、一定期間は破産手続きがとれないことを、今回、お世話になった司法書士さんから聞きました。今後は、安易に借金をすることがないよう、預金をし、計画的に生活をするなど、両親や会社の方々、第三者の方々に迷惑をかけないように心がけてまいります。」