無理な住宅購入が…
高浜さん(仮名)は42歳の男性です。高浜さんは、5年ほど前に自宅を購入した直後から、住宅ローンの返済に行き詰まり、カードのキャッシングを利用して、住宅ローンの返済や生活費に充てました。住宅ローンの返済計画に無理があったようです。
その後、借金が原因で奥さんと離婚騒ぎになり、一時は別居状態になるなどしたため、さらに借金の額が増えてしまいました。その後、奥さんとの関係は何とか修復したようです。
破産をすれば自宅を失うことになりますが、 高浜さんは、自宅だけは残したい、という強い意思がありました。
高浜さんは、1年ほど前に、自治体の無料相談を利用した際に、簡易裁判所の「特定調停」という手続きがあることを知り、カード会社5社を相手としてのご自身で調停の申立てを行いました。それまで約400万円の借金があり、毎月、10万円を超える支払いでしたが、毎月8万円程度を返済するという内容の調停が成立し、支払いをしていました。
奥さんは、その後、パートに出て家計を助けてくれたのですが、調停で成立した8万円の支払いが重くのしかかり、高浜さんは、勤務先からも借入をしてまで、調停で決められた返済をしてしまったのです。調停が成立した際、調停委員の方から、「この調停で約束した支払いをしないと、直ちに給料の差し押さえを受ける場合があります」と説明をされていたので、何があってもカード会社に対する返済を遅らせるわけにはいかないと考えたのです。
その後、住宅ローンの支払いも遅れ始め、支払いの遅れたカード会社からは催促の電話が頻繁に入るようになり、高浜さんは、どうすることもできなくなってしまいました。高浜さんは、たまたま見かけた雑誌で、個人再生という手続きがあることを知り、事務所に相談に来られました。
家計の大幅見直しを
なお、住宅ローンを支払えず、キャッシング等の借金をしたケースでは、解決が困難な場合が多いのです。そもそも、住宅ローンの返済が困難で、それに充てるためキャッシングを利用したわけですから、カード会社の返済を一定金額減額したからといって、直ちに住宅ローンの返済が楽になるわけではありません。
したがって、このようなケースでは、家計を十分に精査して、保険を見直して保険料の支払いを減額させるなど、無駄な出費は全て省き、今後3年間(最長5年間)でカード会社等の返済が可能かどうかを判断しなければなりません。
高浜さんの場合、以前、住宅ローンの支払いが滞った時に働いていなかった奥さんが、現在はパートに出て月8万円程度の収入を得ており、子供さんの学費等で増加した支出の3万円を引いても、5万円程度収入が増加しています。
高浜さんの住宅ローンを除いた借金は、総額で500万円程度に膨れ上がっていますが、高浜さんは、個人再生(小規模個人再生)によって500万円の借金を100万円に減額させ、さらに将来利息の免除設け、月2万8千円程度の3年払いにすることが可能です。
勤務先からの借入れがネックに…
ただし、問題もありました。高浜さんは、勤務先からも借り入れをしてしまっていたからです。高浜さんは、司法書士に、勤務先からの借り入れを除外して個人再生の申立てをしたいと懇願しましたが、個人再生手続きは、全ての借金を債権者として加えなければなりません。
そうすると、勤務先には、個人再生の申立てをしたことがわかり、カード会社等に多額の借金があることがバレてしまいます。高浜さんは、「会社をクビになってしまう」と心配しましたが、会社が、借金を理由として従業員を解雇することは法的にできないことを司法書士から説明され、勇気をもって会社に打ち明けました。
万が一、仕事を辞めるようなことになれば、個人再生の手続きがうまくいかず、元も子もありません。
結局、高浜さんは、勤務先に全ての事情を説明し、個人再生の申立てをしましたが、上司の方が、高浜さんの窮状を理解してくれて手続きに協力してくれたため、仕事を続けることができました。
無事に再生…
高浜さんは、予定どおり住宅ローン以外の借金を月2万8千円の返済(3年間)、住宅ローンは、遅れていた分を個人再生の手続き終了までに何とか解消でき、最終的に、無理なく返済していけそうな再生計画が認可されました。
なお、勤務先からの借入も、個人再生手続きにより減額の対象となり、高浜さんは、今後、大幅に減額された支払いを勤務先にすることになります。しかし、高浜さんは、3年後、他の借金の支払いが完了したら、勤務先には、自主的に、不足分を返済していきたいと考えているようです。