自己破産とは
自己破産は、債務者が持っている財産を清算してお金に換え、各債権者に平等に分配する手続きです。しかし、一般的なテレビや冷蔵庫などの家財道具は財産のうちに入りません。したがって、現在、破産の申立てをする一般人の方のほとんどは財産が存在しませんので、財産を清算する手続き(破産管財人を選任しない)は行われず、もっぱら、破産申立ての目的は「免責」を受けて、法的に借金を返済しなくてもいい状態にすることです(「同時廃止」といいます)。
借金の総額が、年収を超えているような方、返しては借りるという自転車操業に陥っている方は、自己破産も解決策の一つとして検討したほうがいいでしょう。
「免責」について
破産の最大の特徴は「免責」を受けて、法的に借金全額の免除を受けられることです。破産法では、免責が認められない「免責不許可事由」が定められており、ギャンブルや浪費によって借金の多くを抱えた人などには免責を与えないのが原則です。したがって、免責不許可事由に該当する方は、個人再生によって、解決を図ることを検討したほうがいい場合があります。
しかし、上記の事例に該当する場合でも、よほど悪質なケースでなければ、免責が認められる場合も多くありますので、経験豊富な司法書士などに相談し、裁判所に反省の態度を書面にして示すなどして免責を得られるような措置をとってもらいましょう。専門家に依頼しないで破産の申立てをされた方が、書類の書き方がよくなかったために、免責不許可と裁判所から判断されたようなケースも見受けられますので、書類の作成には十分な注意が必要です。
保証人がいる場合
あなたが破産して免責を得られても、保証人の責任は消えません。破産や個人再生は、全ての債権者について申立てをしなければなりませんから、あなたが破産すると、債権者は、保証人に対して請求をしてきます。
したがって、保証人とあなたとの関係性や、保証人に請求がいくことになる金額などによって、対応が変わってくると思います。
例えば、保証人が会社の上司であるとか、義理の親であるなど、「保証人に絶対に迷惑をかけられない」などと考える場合には、簡単には破産の申立てはできないでしょう。このような場合は、まず、保証人とよく相談をする必要がありますが、状況によってとるべき対応が変わってきますので、自己判断せずに、経験豊富な司法書士などに相談しましょう。
なお、保証人がすでに自己破産や個人再生の手続きをしていて保証している債務についても免責や認可を受けている場合には、その債務についても法的に解決済となりますので、特に保証人の不利益を気にする必要はありません。
財産(不動産、自動車、生命保険、退職金等)がある場合
(以下の取り扱いは、地域によって異なる場合があります。)
一般的に、ある程度の財産がある場合には、破産以外の方法も検討すべきでしょう。不動産がある場合に破産の手続きをとると、原則的にその不動産の所有権を失うことになります。しかも、原則として、その財産を処分してそのお金を債権者に分配(配当といいます)するなどのために、破産管財人を選任しなければならず、その費用だけでも最低20万円以上の金額が必要になります。
生命保険に加入している場合は、解約した場合に戻る金額(解約返戻金)の明細書を保険会社から取り寄せ、その金額が財産とみなされますので、20万円を超えるような場合には裁判所から保険を解約し、各債権者に配当するように指示される場合があります。また、解約返戻金がかなりの金額になったり、他の財産と合わせるとまとまった金額になる場合には、破産管財人が選任される場合があります。したがって、そのような場合には、個人再生も検討すべきでしょう。
破産したらどのような不利益があるのか
財産のない方、職業制限にかからない方は、破産による実質的な不利益はないと考えていいでしょう。戸籍に記載される、選挙権がなくなる、今後旅行に行けない、パスポートが取れない、テレビや冷蔵庫を持っていかれる、家族全員がその財産の4分の1を失う、通帳を作れない、離婚をしたほうがいいと聞いた、など、相談に来る方は色々な情報を持っているようですが、破産をしても全く上記のようなことにはなりません。ただし、生命保険の外交員など、他人の財産を管理することがあるような職業は制限される場合がありますが、免責が確定(復権)すれば制限はなくなります。
また、破産をすると「官報」という国が発行する機関紙に、住所、氏名が掲載されますが、これは、もっぱら手続きから除外された債権者の保護が目的で、制裁的な措置ではありません。一般の人が官報を見るようなことはありませんから、あなたが破産をしたことは、あなたが言わなければ他人に知られることはまずないでしょう。なお、近年、「破産者マップ」なるものが国会等でも問題として取り上げられており、注意が必要です。
なお、過去に破産して免責を受けた人は、その後7年間は再度、免責を受けることができませんが、小規模個人再生の申立てをすることは可能です。